開催報告【プロデュース人材育成講座 Vol.5】ものづくり三代目が日本経済の「ファクト」を毎日ツイートする理由 ~経済統計(ファクト)で確認する日本経済の現在地と課題~

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研究・イノベーション学会「プロデュース分科会」と共にお届けするプロデュース人材育成講座。

第5回は「ものづくり三代目が日本経済の『ファクト』を毎日ツイートする理由」と題して、3/23(水)19時よりオンラインにて開催いたしました。ゲストとして、小川真由氏(株式会社小川製作所 取締役)に、モデレーターには大津留 榮佐久氏((一社)OSTi(オスティ)代表理事)、ほかに久野美和子氏(電気通信大学 客員教授)にもご同席していただき、統計から見えてくる現在の日本経済と進むべき道について、具体例をもとにお話いただきました。

開催報告

日本の今の立ち位置とは
~貧乏になっちゃった日本~

講師の小川さんは、金属加工企業の取締役という企業人としての顔のほかに、経済統計をグラフ化しTwitterで日々発信していらっしゃいます。今回は経済統計(ファクト)から見えてくる日本経済の現在の立ち位置とその原因、そして進むべき道について語っていただきました。

話の中心としては、日本が抱える根本的な課題として労働者の貧困化したということです。

まずマクロ視点から日本の過去30年間の停滞により、以前GDP第3位であるものの米中には差をつけられ、下位国に追い上げられている現状についてから始まります。

経済統計をグラフとして可視化しての講演であるため、日本の立ち位置としてOECD内でも平均を下回る凡庸な先進国(特に労働生産性では低い)になってしまっていること、特に一人当たりで見たときのGDP・労働生産性や平均所得の伸び率について鈍化していることにあることが明白に突き付けられ、衝撃的でした。

ではその原因とは
~原因はやっぱりバブル崩壊!?いままだ続く影響~

日本が停滞し、人々が貧困化してしまったその原因は何か。その答えについて今度は企業活動に焦点当てていきます。

本来ならば企業の設備投資とその費用を賄うための借入がその国の経済を活性化するのですが、バブル期までの過剰投資と負債の反動から国内への設備投資と借入が抑制され内需を押し上げる力にならなかったこと、また停滞した国内から海外へ企業が活動拠点をシフトしたことや安値重視・規模の生産効率追求が特徴の日本企業の在り方が日本の労働人口の大きな部分を占める中小製造業企業の生産性とそこで働く人たちの所得を抑制しまったとの見解を示されました。バブル崩壊が1990年代半ばとされるので、25年たってもその後遺症に日本は苦しんでいるというわけです。

今後どうしよう日本、このまま落ち続けるのか?
~小川さんの6つの提言。いまこそ現状をチャンスが来ている~

では、上記を踏まえての日本の進むべき道についてどのようにすればよいか。

小川さんの提言は経済の柱である中小企業や製造業が輸出強化や隙間産業への進出いき付加価値を高めていくことだということです。そして達成するためのカギとして顧客と仕入先との関係性の見直しと従業員への付加価値を向上させる投資および賃金向上など6つのポイントをあげ、ITを活用すれば中小企業ほど取り組めること、現状を変えられるチャンスであるとして講演を締めくくりました。

今回の講演については話の内容もさることながら、経済統計を一つ一つ積み重ねていき、答えを導き出す手法にとても説得力を感じるとともに、統計分析力を身に着けたいと考えている私にとってその活用方法はとても勉強になりました。

セミナー後半は、企業の研究や産学連携の話や企業だけでなく個人レベルでの越境ビジネスに対するアンテナの張り方やかかわり方まで小川さんの提言を深堀する多様な質疑、コメントが飛び交い白熱した議論が展開され、充実した形で本イベントも幕を閉じました。

最後までお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました!

登壇者プロフィール

【ゲスト】

小川 真由(おがわ まさよし)

株式会社小川製作所 取締役

慶應義塾大学理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院理工学研究科修士課程(システム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。

精密機械加工メーカーにて修業後、家業である小川製作所に合流し、医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研 磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。

日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。

◎小川製作所公式ツイッターはこちら »

【モデレーター】

大津留 榮佐久(おおつる えいさく)

(一社)OSTi(オスティ)代表理事
(国研)科学技術振興財団(JST)共創の場 AD(アドバイザー)
(国研)日本原子力研究開発機構 イノベーションハブSA
大阪大学 量子情報・量子生命研究センター(QIQB) 特任教授

■経歴

1979年 米半導体大手 Texas Instrument Japan入社、技術マーケティング、システムBU・グループ長歴任 Reengineeringプロジェクト 日本TI代表、BPD (Business Plan Development) 社内認定講師
2001年 ソニーセミコンダクタ九州(株)にて実装部門 部門長、SIP(System Integration Platform) 事業部長、大分テクノロジーセンター代表、プロキュアメント(国際資材調達)部門長(熊本・長崎・国分TEC)を歴任
2014年 研究イノベーション学会 29回学術大会 学会賞受賞「リニアモデルにとらわれないイノベ創出スパイラルモデル」
2015年 文部科学省 科学技術・学術審議会 地域科学技術イノベーション推進委員会 専門委員 (3期目)経済産業省 NEDO オープンイノベーション協議会 第一回ワークショップ モデレータ
2019年 名古屋大学 未来社会創造機構 オープンイノベーション推進室 特任教授 ビジネスプロモータ
2021年 大阪大学 量子情報・量子生命研究センター(QIQB)特任教授 (産学連携マネジメント)に就任

開催実績

タイトル 「ものづくり三代目が日本経済の「ファクト」を毎日ツイートする理由」
開催日時 2022年3月23日(水)19:00~21:00
主 催 研究・イノベーション学会「プロデュース研究分科会」
共 催 NPO法人ZESDA
「プロデュース人材育成講座」について

本講座は、研究・イノベーション学会「プロデュース分科会」とNPO法人ZESDAが共同開催し、多様なプロデュース事例や理論を学習しながら、「気づき」「視点を変え」「考察する」ことによって産学連携を真の成功に導くための推進力を醸成することを目的としています。

2021年以降のシリーズでは、現場における実践知をより立体的に深めていくため、プロデュースする側とされる側の「関係性」に関する研究に踏み込んだ内容となっています。多くの事例に触れることで様々な角度からの知見を得られるよう設計された講座ですので、続けて参加されることをお勧めします。