「日本のことは、マンガとゲームで学びました」の著者より「クールなジャパンかどうかは見る人次第~ 世界に日本ファンを増やすために、如何にソフト・パワーを使うべきか~」Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第十回セミナー開催のご報告

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NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、(株)自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。

3月27日(金)朝7時30分より開催した第十回PIPDセミナーでは、ゲストスピーカーに「日本のことは、マンガとゲームで学びました(小学館)」の著者であり、慶應義塾大学研究員兼フリーランスの翻訳家・通訳として活躍されているBenjamin Boas(ベンジャミン・ボアズ)氏をお招きし、「Cool Japan is in the Eye of the Beholder – How to use soft power to increase “fans of Japan” world-wide (クールなジャパンかどうかは見る人次第 ~ 世界に日本ファンを増やすために、如何にソフト・パワーを使うべきか~)をテーマにプレゼンテーションを頂いた上で、参加者の皆様と活発なディスカッションを行いました。

愛用の作務衣(さむえ)姿で登場したBoas氏は、冒頭、「ソフト・パワーとは、力や圧迫を使うこと無く、自分が望むように他者が行動するよう促す力である」との定義を紹介した上で、「日本がソフト・パワーを行使した結果の具体例は、自分自身である」と述べ、自分と日本との出会いのストーリーを印象的且つユーモアたっぷりに語られました。

「僕は、4歳で任天堂のスーパーマリオに夢中になり、中高時代は「ときめきメモリアル」と恋に落ち、日本語を習得、さらに日本語のマンガ・ゲームを楽しむためにアメリカの高校で日本語クラスを創設するイニシアティブを取り、そして、20歳のときチベットで麻雀と出会い、東大や京大大学院で麻雀研究論文を執筆・・・」

大笑いに包まれる会場に対して、Boas氏は、「振り返ってみれば、マリオにはまっていたとき、自分は、それが日本の物とは知らなかったし、大好物の「テリヤキ」が日本語と言うことも知りませんでした。つまり、私が、自然に興味を持ち、夢中になったことが、実は日本だった、ということなのです。こうした経緯には、日本のソフト・パワーや「クール・ジャパン」を考える上で大切なヒントが隠されているように思います」と語ります。

ここで、Boas氏は、明治大学クール・ジャパン・プログラムのプロデューサーを務められている北脇学先生の示唆的な発言を引用されました。「自分自身を“クール”と呼ぶのは、そもそもクールでなく、日本の価値である“謙虚さ”への挑戦ですらある。創造性というものは、単なるマーケティングからは生まれない。」

その上で、Boas氏は、日本が生み出す様々な価値に世界の人々を惹き付け、ソフト・パワーを発揮していく上で大切な事柄として、以下の3点を提示されました。
第一に、他者と対話し、自分が受け容れがたい事柄を受け容れること。この点についてBoas氏は、「そもそも、日本人では無く、外国人の目で見て“Cool!”と見えたときに初めて、“クール・ジャパン”になるのだから、日本人には想定できない、あるいは受け容れがたい捉え方で外国人が日本のモノを“Cool!!”とみなしている、と感じることがあっても、まずは、それを受け容れる必要がある」と主張されました。

第二は、「他人に対して、“何に興味を持つべきか”を語るのではなく、彼らが既に持っている興味をさらに深めるための手助けをする」こと。Boas氏は、「世界には、日本人が知らないうちに“クール・ジャパン”として脚光を浴びているものが多くある」と述べ、フランスでは、日本の17万人を遙かに上回る60万人の柔道人口を擁すること、黒澤明監督の羅生門は、1951年のヴェニス映画祭で、監督自身も知らないうちに優秀賞にノミネートされていたこと、そして歌謡曲「上を向いて歩こう」が世界で1,300万枚を超える売り上げを記録していること、などを例として挙げられました。また、「Your Cool is not My Cool」というシンプルなフレーズで、「クール・ジャパン」を日本人だけで議論をするのはナンセンスであり、外国人の視点で、日本語以外で議論することが必要であると述べられ、好例として、中東で人気を博している「キャプテン翼」は、主人公の名前を「翼」ではなく、現地で良くある名前である「マジット」に変えていること、そして、イラクに派遣された自衛隊が、「キャプテン・マジット」の絵を給水車の車体にプリントした結果、現地の人々に受け入れられたというストーリーを紹介されました。

そして三つめのポイントは、「地に足のついた議論をする」こと。つまり、単に「何がクール・ジャパンやソフト・パワーに当たるのか」についての議論を続けるだけでなく、「日本の価値に対して、外国人のアクセスをどうやって増やしていくのか」という現実的な方法論を忘れてはならない、ということです。Boas氏は例として、文部科学省等が提供する奨学金、在外公館における現地スタッフの雇用、海外の日本文化フェアなどをツールとして挙げるとともに、こうした場を通じて日本の価値にアクセスを持った外国人に対しては、「○×は、△▲だから興味深いものなんだ」と価値観の押しつけや誘導をするのではなく、まずは自然に経験をしてもらうこと。その上で、「どのようなモノに対して、どんな興味を持ったのか」、と問いかけ、その答えを受け入れ、そして、その興味をさらに深めるための材料や機会を提供するというアプローチを取ることが大切であると主張され、プレゼンテーションを終えました。

プレゼンテーション後の質疑応答では、日本の価値を国外に発信していく際の政府の役割や国外にある「Japan House」等のプロモーション施設の効果的な活用方法等について議論が交わされたほか、日本に滞在・在住している外国人を、日本の価値を発信し、説明する「日本大使」として活用するために、何らかの資格を創設してはどうか、といった具体的なアイディア等が出され、活発且つ双方向の意見交換が交わされました。

今後もZESDAはグローバル・ネットワークを構築していくため、「Platform for International Policy Dialogue(PIPD)」を共催して参ります。
引き続き、ZESDAを宜しくお願い致します。