インバウンドが錦鯉業界を変えた

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ZESDAスタッフの呉です。ZESDAはグローカルビジネスを推進していますが、以前私が携わっていた錦鯉養殖業界のグローカルビジネスの模様についてご紹介したいと思います。

錦鯉は縁起物として中国人に人気

2019年2月に開催された「全日本総合錦鯉品評会」で優勝した錦鯉が2億300万円で落札されました。

競り落としたのは台湾人ブローカーで、実の購入者は中国広州出身の錦鯉愛好家という噂です。「全日本総合錦鯉品評会」とは世界一の錦鯉を決める大会で、世界中から愛好家が集まり、いわば、“錦鯉のワールドカップ”です。「泳ぐ宝石」と呼ばれる錦鯉は昔から中国人に人気があって、「鯉の滝登り」として知られとても縁起良いものです。

錦鯉も人間と同じく秋になると食欲が旺盛な時期となります。魚体が最も大きく、艶やかになる秋が売れ時です。

昔からの鯉の販売方法はとても単純です。お客様が来日し、養鯉場を訪問し好きな鯉を選び、養鯉場と値段交渉し成約に至ります。

お客様の要望に従って空輸で鯉を発送する、もしくは日本の養鯉場に預けます。日本に置く理由としては、毎年いくつかの品評会で賞を取るためです。

実は日本で生産される7割もの錦鯉は海外へ輸出され、その半分以上は中国人が購入しているといわれています。

コロナの前からライブ配信によりネットで錦鯉の販売がじわじわと人気がでて、携帯一つで錦鯉を購入でき決済までできるというように販売方法も多様化になってきました。ドラゴンマネーは錦鯉の業界に想像以上流れ込んできました。

中国産錦鯉が誕生、一方で衰退していく日本の錦鯉業界

しかし、何年も前から愛好家が中国各地で養鯉場を建て、日本産の錦鯉を中国で飼育し繫殖させ、新たな血統を創り「中国自家産」と呼ばれる中国産錦鯉が誕生しました。

高い輸入の日本産錦鯉よりお手頃価格ですぐ手に入る中国産錦鯉のほうが少しずつ人気出始めた。さらに愛好家は養鯉場造りのお金を惜しまず、世界トップレベルの浄水、殺菌設備や加温機器を投入し、餌や飼育技術も研究しています。

また中国国内で「中国錦鯉大会」が開催され、日本からも審判員を呼び、かなりの規模になってきています。

勢いにのる中国と反対に日本の錦鯉業界は年々と衰退していくように感じます。大きい養鯉場は資金が豊富で設備投資や養鯉場の運営に問題ありませんが、小さい養鯉場は資金繰りが厳しく、養鯉場の老朽化が進み、儲からないと後継ぎも地方から離れていきます。

これからもインバウンドで様々な角度から錦鯉業界を変えていきます。この錦鯉業界から日本全土の地方再生に関する課題が見えてくるでしょう。