Mr. Jim Clifton (ギャロップ 会長兼CEO)より 「世界の職場改革 ~女性の大躍進~」 Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第29回セミナー開催のご報告

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NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、株式会社クリックネット まなび創生ラボ株式会社自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。

10月29日(土)の16:00から17:30までの時間帯で開催した第29回PIPDセミナーは、Gallup社のCEOであるMr. Jim Clifton をゲスト・スピーカーとしてお招きし、「世界の職場改革~女性の大躍進」をテーマにお話し頂きました。

◆ Gallup社について
冒頭、Clifton氏は、1935年に米国の統計学者であり実務家でもあったジョージ・ギャラップ氏によって設立されたGallup社のミッションについて、以下のように伝えられました。「“民主主義とは人々の意志である”とすれば、誰かが“人々の意志がどこにあるのか”を見出す必要がある。さきほど「PIPDは、政治・経済・社会のIssue(課題)について問題意識を深める場だ」という説明があったが、何がIssueなのか、市民が何を考えているかについて、国のリーダーが取り違えると、むしろ世の中をおかしくしてしまう。」

Gallup社はこうした問題意識の下、様々な世論調査や分析を行い、現在では、米国のみならず世界20カ国に構える30の事務所を通じて、主要なグローバル課題に関する市民の声を政策担当者へと届けています。

◆ 人々の価値観」の変化について
Gallup社が長年行ってきた調査に、「あなたが欲しいものとは?(what you want?)」という問いかけがあるそうです。Clifton氏は米国においては、歴史的に、人々が「欲しい」と考えるものは、自由、独立、平和、家族、そして「良い仕事」へと変化してきたと紹介されました。

この中で、Clifton氏は、「自分にとって、最も大切な、人生の目的といえるものは家族であり、家族がいなければ自分を幸せにはできない」と語られ、「これはベビー・ブーマー世代の特徴でもある」と指摘されました。一方で、2000年以降に社会人になった、いわゆる「ミレニアルズ」は、自分や身近な家族への貢献では足りず、「社会にとって意味のあるよい仕事を出来るか」が重要になってきていることが、統計的に示されていることを示されました。

◆ 仕事を巡る価値観の変化
以上を踏まえ、Clifton氏は、さらに興味深い調査結果を紹介してくださいました。
自分の仕事に対して、意味や意義、すなわち、エンゲージしている者の割合は15%であり、エンゲージしていない者の割合は60%、逆に全くエンゲージしていない者の割合は25%、というデータです。「全くエンゲージしていない」層は、仕事において目的やミッションを感じていないと考えられます。他方、「エンゲージしている」層は、新規顧客の開拓やビジネスの創造をリードする生産性の高い人たちです。
この点、GDPを人口で割ることで示される「生産性」についてみると、アメリカの生産性は、この20年間下がり続けているそうです。また、IPOの数も、2年前は280件、1年前は140件、今年は70件と、毎年半減しています。
Clifton氏は、こうした統計データを示しながら、「仕事の目的やミッションを強く感じられる人間を職場で育てていかなければ、生産性も技術革新も高まらず、結果、GDP成長も低調なままであろう」と警鐘を鳴らされました。

◆ 求められるマネジメントの変化について
Clifton氏は、職場で求められるマネジメントのあり方も、ベビー・ブーマー世代とミレニアルズとで様々な変化が見られると指摘されました。例えば、働き手が仕事に求めるものについては、「給料額」から「目的やミッション」に、「個人的な満足(休暇の長さや福利厚生の手厚さ)ではなく「自己の成長」に変わってきているそうです。

また、上司との関係についても、「一方的に指示や指摘を与える存在」から「自分を育ててくれるコーチのような存在」に、上司と部下とのコミュニケーションについても、「年に一度のパフォーマンス・レビュー」から「日常的・継続的な会話」へとシフトしています。

また個人の成長に当たって重視されるべき点も「弱点の克服」から「強みの把握と発揮」へと変わってきているそうです。ここでClifton氏は、「弱点は強みになることはない一方、強みは人生を通して無限に伸びていく。また、弱点は人に補ってもらう事も出来る。だから、弱点自体は問題ではない」と指摘されました。こうした変化については、会場からは学校教育におけるシステムとも結びついたものでは、という指摘もなされました。

◆ 管理職に占める女性の割合について
続いてClifton 氏は、管理職に占める女性の割合の国際比較のデータを示されました。世界の平均が43%、中国は35%、韓国は28%であるのに対して、日本はわずか11%という結果です。なお、この割合は中東の保守的なイスラム教国であるイエメンと同程度であるということです。また、アメリカは世界の平均と同程度であり、アジアで女性管理職割合が高い国としてタイが紹介されました。

◆ ディスカッション
Clifton氏からのプレゼンテーション終了後のディスカッションでは、特に日本の女性管理職の相対的な少なさとその原因や対応策を中心に、参加者同士のインタラクティブなやりとりがなされました。

「アメリカの管理職に占める女性の割合は、少し前は今の日本と同じような状況だったと思うが、今現在の世界の割合と同程度という状況に至るまでに何が障壁だったのか、女性を管理職に登用していくに当たっての障壁は何か」、という質問に対しては、「男性は女性管理職が増える結果、どのような影響が自身や組織に起こるか分からないため、不安なのではないか」という意見が出されました。他方、こうした不安感は日本男性特有のものではなく、ある程度どの国でも共通している傾向ではないか、という意見も出されました。
さらに、日本の家庭・家計における妻の役割や権限が非常に強いことなど、労働市場とは異なる役割を、社会・家庭で男女が果たしてきたことが指摘されました。こうした傾向を背景に、女性は男性よりも、「家庭か、キャリアの追求か」の選択を迫られることから、将来管理職となるいわば候補者の母数が少なくなってしまっており、結果として管理職も少ないのでは、という意見も出されました。

また、管理職に一定数に女性が就くようにする「割当て制度(Quota制度)」はうまくいくかという質問もなされました。これについては、意図は理解できるが、適材適所の観点からは疑問という意見が出されました。

今回は、1時間半のセミナー修了後も1時間程度、ソフトドリンクとお菓子を用意した懇親の時間を持ち、Clifton氏から示された様々なデータや問題意識をもとに、活発な意見交換が参加者の間で交わされました。

なお、今回も株式会社クリックネット 社長の丸山剛様、並びに社員の皆様のご厚意で、セミナー会場として同社が主宰する「まなび創生ラボ」をお貸し頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。有り難うございました。