開催報告【グローカル・ビジネス・セミナー Vol.20】4000社超のデータから読み解く日本企業の海外進出動向と成功のポイント

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NPO法人ZESDAが明治大学奥山雅之研究室と共にお届けするグローカル・ビジネス・セミナー。

第20回は、株式会社Resorz「Digima~出島~」編集長の鷲澤 圭(わしざわ けい)氏をお招きし、日本企業の海外進出についてお話いただきました。

開催報告

Digimaはまさに「民間版JETRO」

海外ビジネス支援プラットフォームである「Digima~出島~」は、日本企業の海外進出をサポートするというコンセプトの下、多種多様なサービスを提供されています。
今回は毎年作成している「海外進出白書」から最近のトレンド等をご紹介いただきました。

日本に影響の大きい中国、ASEAN、米国における動向を中心にコロナ禍やウクライナ危機といった時事動向の影響まで幅広く整理されています。

個人的には、

  • ASEANを中心に以前は工場設立が中心だったものが、現地のクオリティが上がっていることを要因に製造委託が増えている。
  • 各国のマーケット自体も伸びていることから「地産地消」「生産移管」がトレンドになりつつある。

といった点が新鮮で、言われればなるほどと思うものの、普段のニュースを見ているだけでは認識できないという点で、このDigimaの活動、レポート内容の価値を感じました。

Digimaでは海外ビジネスの成功を「海外事業を3年以上継続している企業」と定義し、企業全体と成功企業との差異が成功要因と考えており、今回は以下のような点が挙がりました。

  • 現地採用が多い
  • 展示会・商談会に取り組んでいる
  • 販売代理店の活用→現地法人・拠点設立が多くなってきている
  • リスク管理の導入に積極的
  • 企業調査を専門家に依頼している

海外展開を考えている企業にとってはすぐにでも参考になる情報が多いのではないでしょうか。

また、これからのビジネスにおいて重要な部分として『リアルとデジタルの融合=人の移動・接触を伴わない』にも触れていて、越境ECやオンライン商談会等、日本にいながら海外と接触するアプローチにどこも力を入れざるをえない環境になってきているとの説明がありました。

Digimaは、海外進出を心がける日本企業にとって幅広い情報とそれぞれにトピックに対する一つの独自見解を提供してくれています。コンテンツ活用は全て無料ということで、以前は大企業でしか得ることが難しかったノウハウが、中小企業にも活用できるようになっていて、このような団体が日本で味方になってくれるのは非常に心強いことだと思います。

奥山先生からは、Digimaはまさに「民間版JETRO(日本貿易振興機構)」ではないか、とのコメントがありました。

海外進出したい業者は増えている

今年の6~7月がDigima始まって以来無料相談が多い状況だそうで、海外ビジネスの注目度は確実に上がっているようです。
海外進出白書を中心とした情報に加えて、どのような視点を持つべきか、参加者からいくつか意見があがりました。

電気自動車のように従来の製造業からIT企業に主戦場が移る中で、ものづくりがシンプルになってきているトレンドがあり、その中で、日本の製造業の技術、例えば板金技術等がシリコンバレーで評価される、といった事例も出てきているそうです。

日本の製造現場が使われているといったことは朗報である反面、人件費の高騰で日本がまた輸出産業になりつつあると状況でもあり、雇用が戻ってきている反面、付加価値をつける競争では負けているといった捉え方もできるとの見方もあがっています。

鷲澤さんとしても、付加価値を高めるために、Digimaとつながる企業のネットワークづくりがプラットフォームであるDigimaの使命であると認識していて、具体的には、コワーキングスペースの活用や各国の出島とも言える大使館との連携等に注力しているそうです。

海外ビジネスの活性化が必須課題である日本にとってDigimaのような活動が、日本産業が生き残っていくための鍵になってくると思いました。

登壇者プロフィール

鷲澤 圭(わしざわ けい)

株式会社Resorz「Digima~出島~」編集長

大手出版社での書籍編集者を経て、2012年に株式会社Resorzに入社。企画営業、メディア運営業務に従事し、2015年「Digima~出島~」編集長に就任。海外ビジネス関連ニュースやノウハウを日々配信している。
また、2014年より海外進出企業の相談をもとにした「海外進出白書」を執筆・発表。

奥山 雅之(おくやま まさゆき)

明治大学政治経済学部 教授

中小企業施策の企画・立案に長く携わるとともに、各自治体の施策検討委員会委員などを務める。専門は地域産業、中小企業、地域ビジネス、起業、製造業のサービス化、企業診断、産業政策など。博士(経済学)。科学研究費を得てグローカルビジネスを研究中。

開催実績

タイトル 「4000社超のデータから読み解く日本企業の海外進出動向と成功のポイント」
開催日時 2022年7月29日(金)20:00~21:30
主 催 NPO法人ZESDA
明治大学奥山雅之研究室
共 催 研究・イノベーション学会プロデュース研究分科会
グローカル・ビジネス・セミナーについて

近年、新たな市場を求めて地方の企業が国外市場へ事業展開する動き(グローカル・ビジネス)が活発になっています。しかし、地方の中小企業が国外市場を正確に捉えて持続可能な事業展開を行うことは、海外人材の不足(語学能力含む)、ITスキル、カントリーリスク等一般的にはまだまだハードルが高いのが現実です。

そこで、グローカル・ビジネスの実態把握を通じて特有のマネジメント理論の確立を目指して研究している明治大学奥山雅之研究室と、地域企業に対して都市人材の海外ネットワークやスキルをプロボノ活動によって提供してグローカル・ビジネスの支援に一定の成果を上げているNPO法人ZESDAが協働し、地域の中小企業におけるグローカルビジネスの成功事例や興味深い挑戦事例に関わったキーパーソンを招聘して事例研究を行って知見を貯め、また研究・ビジネス人材のネットワーク・コミュニティを構築することを通じて、グローカル・ビジネスの発展に貢献するべく、グローカル・ビジネス・セミナーのシリーズを企画していきます。