女性プロデューサー集結!イノベーションを語る!シンポジウム 5/12(土)@お茶の水女子大学 開催レポート

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5月12日、学会・NPO・業界団体・総務省等の産官学民連携シンポジウムが、お茶の水女子大学にて開催されました。

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「ICTとプロデューサーシップ」シリーズの第2弾になりますが今回のパネリストの皆さんは何と全員、女性です!

第1弾開催時、参加者の方々から沢山の要望があり、今回、様々な分野の第一線で活躍されている「日本屈指」の10人の敏腕女性プロデューサーに集まって頂き、お話を伺うことになりました。

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まず、主催団体である研究・イノベーション学会プロデュース研究分科会主査の久野美和子氏より、開会の挨拶がありました。

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「今回のシンポジウムの特徴は、主に3つあります。

①女性
②プロデューサー
③ネットワーク型の横の連携

まず1つ目は、登壇者に女性を集めた事です。新しい事、すなわちイノベーションを起こすのは一般的に(単に年齢という意味だけではなく、気持ちが若い)若者、そして女性が多いので、今回は『女性』にスポットを当てました。女性にはヒエラルキーを好まなかったり、従来のしきたりにとらわれないなど、イノベーションを起こすのに重要な特徴を持っています。
2つ目は、プロデューサーとは何かを、ここで皆さんと考える事です。日本は研究成果や新しいイノベーションに対して商品化したり、事業化する等といった価値づけが弱いと考えています。ヒト・モノ・カネを組み合わせて皆で作る事を企画できる、真のプロデューサーは日本ではあまり育っていないというのが現実です。
3つ目は、今回のパンフレットを見ると分かる通り、沢山の主催・共催・後援が並んでいます。これは、単一組織・モノカルチャーによるイノベーションが困難になってきており、誰かが一つの事をやるためには、沢山の人の助けが必要であること、つまりネットワーク型の横の連携が重要な、複合型の社会になってきているということの表れでもあります。
今回のシンポジウムをきっかけに、是非皆さんも次の活動につなげていってください。」

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次に、共同開催ならびに今回のシンポジウムの会場を提供していただいたお茶の水女子大学理事・副学長の森田育男氏からのご挨拶です。

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「私は、昨年まで東京医科歯科大学におりまして、現在と同様研究と産学連携の担当理事を8年間勤めていました。こちらに来てからも、組織対組織の産学連携を推進している段階で、医学系の産学連携ネットワークも作ったりもしています。そこで感じたことは、大学においては先生方の意識改革が必要であり、産学連携推進に関してはプロデューサーが必要であることです。しかし意識改革や人材育成は一朝一夕でできるわけではありません。
そんな中、今回のシンポジウムは非常に縁が深いものと思っています。登壇者が全員女性ということも、本学にとってはとても重要です。というのも実は10月から新たな寄付連携講座として、女性活躍推進連携講座を新たに立ち上げる準備を進めているからです。異なる30業種30企業の方が作る寄付連携講座で、大学の学生を巻き込んだ形で将来のダイバーシティ実現の為に何が必要か、参加企業ともに考え実践していく講座です。女性の活躍なしでは日本社会の発展がないことは間違いなく、本学が果たす役割も大きいと考えます。

本日は長時間になりますが、超一流の女性プロデューサーの方々に集まって頂いておりますので、ご参加いただいた方にも十分満足していただける内容になると思っています。
素晴らしいシンポジウムになります事を祈念し、開会の挨拶とさせていただきます。」

プログラムは、第1部が基調講演、第2部は女性プロデューサーの方々の講演と、パネルディスカッション、第3部は特別対談の3部構成となっています。

【第1部】

~ICTとプロデューサーシップによる地方創生・地域の課題解決について~

最初の基調講演は、前総合科学技術・イノベーション会議委員の原山優子氏です。
society5.0の作成に携われたご経験等を踏まえて、リーダーに要求される能力について、ご自身のお考えをお話し頂きました。

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原山さんは、今の時代は「かなり早いスピードで社会変革が起きていて、どうしたら良いか考えている間に次の事が起きてしまう程、変化の激しい時代になっている」と指摘しました。

「だから、どういう社会を私たちが目指しているのか、そのために何をしたら良いのか、スピード感を持って考えなくてなりません。その際に必要とされるのが、アイデアを持つイノベーターですが、色んな人やアイデアを溶け込ませる事が出来るプロデューサーの力も必要です。一人で両方できるという人もいますが、協働という発想もあります。
また、皆さんにも考えていただきたいのが、私たちは『二分法の呪縛』から解放される必要があることです。先進国と開発国といったように、私たちは文脈を分かりやすくするために『二分法』を良く使います。しかしこの方法だと、私はどっちかなというポジショニングに囚われてしまい、そこで発想が止まってしまうのです。それに囚われない発想が、これから時代、なにかを仕掛けていくためには必要なのです。
もう一つ、リーダーシップの話をしたいと思います。誰がリーダーシップを取るのかですが、最初に思い浮かぶのは社会的地位のある人、組織の長だと思います。しかし、それだけではなくて、外から見て、あ、この人だなと分かる人、つまり社会的な認知も、今後は鍵になってくると思います。必ずしも組織がないと取れないわけではありません。
そして、リーダーシップの取り方ですが、枠を超えてリーダーシップを発揮できるリーダーが求められています。これからの時代のリーダーに求められる能力は、相手の意見を聞き趣旨をくみ取ることが出来る能力、そして、既存の枠に囚われることなく、発信力があって、色んな人を巻き込んでいける能力が必要になります。そういった人材を育てるためには、今までの大学や企業の場での教育では立ち行かなくなってきています。教育のあり方についても、再考する事が重要になってきています。」

~ICTによる地域貢献施策~
次の基調講演は、総務省 情報流通行政局長の山田真貴子氏です。
ICTは、地域にどのような貢献をもたらすのか。地域のICTによる課題解決事例を通じ、ICTを活用して地域が抱える課題をどのように解決に導いたのか、そして、ICTが描く可能性についてお話し頂きました。

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「日本ではゆっくりと人口減少、そして生活水準の低下が進行していて、特に地方においてこの問題は深刻になっています。この『静かなる有事』に備えるために、私達はICTを徹底的に活用し、ポジティブに社会に変えていく必要があります。
ICTにより地域課題が解決出来た例は沢山あって、例えばさいたま市では、保育園入所選考業務にAIを活用した結果、今まで延べ1000時間かかった作業が数秒で実現しています。 また、自治体が花火大会などのイベントを開催する際に、一時的に駐車場が不足してしまう問題があったのですが、地元住民や地元企業が持っている遊休地を有効活用して、駐車場シェアリングサービスを導入した結果、駐車場不足が解消し、渋滞や不正駐車の軽減にもつながりました。
自治体にはICT知見を持つ人材が不足していたり、情報が十分にないケースも多いため、総務省では、地方公共団体等からの求めに応じて、ICTの知見等を有する『地域情報アドバイザー』を派遣し、助言を行っています。アドバイザーはまさにプロデューサーであり、求められる能力は、やりたいことを魅力的な言葉で表現できる力、スケジュール管理能力、シンポジウム開催したりする等の仕掛けづくりが出来る能力、そして最後に何より、信念を持っている事です。」


【第2部】

第2部では、「地域の課題解決とプロデューサーシップ」をテーマに女性プロデューサーの皆さんの話を伺いました。

第2部のトップバッターは、本日の司会進行役を務めている、清水章代氏です。

~NPO法人ZESDA・プロデュース研究分科会の活動について~
当NPO法人ZESDAの清水さんは約5年間に渡りZESDAで活動しており、現在はカレッジ部門長を務めています。彼女自身が女性プロデューサーとして様々な活動に携わってきたことから、今回、登壇者として参加することになりました。

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「一般的に良く知られている『プロデューサー』は、エンターテイメント業界にいる、タレントさんや裏舞台の技術系の人たちを集めて、新しい事を創り上げる人を指しています。しかし今、イノベーションが起きているビジネスの世界においても、多様な人やアイデアを繋ぎ合わせて、新しい価値を生み上げる事が出来る『プロデューサー』が求められています。
NPO法人ZESDAは『プロデューサーシップ®』により、日本発のイノベーションをおこすことを理念に掲げています。職場や学校などの本業ではなく、家庭や友人などのプライベートでもない『第三の場所(サードプレイス)』が今熱く、ZESDAでも様々な動機から参加したスタッフが100名ほど在籍しています。そして、ZESDAは冒頭で申し上げた『プロデューサー』を育成する場でもあります。
ZESDAでは様々な活動を行っていますが、例えば、昨年から今年にかけ、ある女性起業家の支援を行いました。具体的にはアジアのプロのデザイナーと学生デザイナーが、日本の織物や生地を使用して、日本をテーマに考えたデザインを披露するSAKURA COLLECTIONというファッションショーの運営をサポートしました。
また、地方創生への取り組みも行っていて、石川県能登地域にある農家民宿群『春蘭の里』の支援を行っています。昨年は2回現地へ赴き視察を行い、今年3月には都立公園を会場にして、交流会イベントも開催しました。
この他、ZESDAと関わりの深いプロデュース研究分科会での活動も行っており、更にこれからは4月に入学した大学院で研究も行う予定です。これらの活動が世の中にどれだけ効果をもたらすのか、また講座参加者の行動変容にどうつながったのか、定期的に調査を行っていきたいと思っております。今後ともご協力、よろしくお願いいたします。」

~児童養護施設、そして「ゆでたまご」の活動について~
次は、本日の最年少女性プロデューサーである、阿部華奈絵氏です。阿部さんは、高校3年間を児童養護施設で過ごし、ご自身の経験を経て感じた、ある強い信念から有志団体「ゆでたまご」を立ち上げました。

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「普通の家庭で育った子供と児童養護施設で育った子供には大きな違いがあります。それは18歳で自立をしたとき、頼れる親や後ろ盾の存在がいない子供は、社会で一度失敗したら再挑戦が出来ないということです。
実際、親の代わりとなって様々なサポートをしてくれる団体は沢山あります。しかし、多くの施設経験者は、その支援団体の存在をしらないまま社会に出てしまいます。必要な情報が必要な人に届いていない!と感じました。支援団体と施設経験者をつなげる仕組みを作りたい、そのための手段として、『ガイドブックを作って施設経験者に配りたい』と思うようになりました。一人ではできないので、SNS等を使って声を上げた所、予想以上に様々な年齢層、異なる業種の仲間が集まってくれて、有志団体「ゆでたまご」を立ちあげることになりました。主な活動内容ですが、望まれている情報は何か等アンケート調査を行いながらガイドブックを完成させ、各施設を通じて児童に配布しています。予算は、チャリティ活動や講演等を通じて予算をねん出しています。
私の最終的な目標は、『ガイドブックをなくすこと』にあります。ガイドブックを作ろうと考えたのは、人のつながりがなく、情報が入ってこないから。でも、いずれ、それがなくても人とのつながりで、必要な情報が必要な人に届くような社会を目指していきたいと思います。」

~前例のない福祉避難所の開設支援の経験~
次は国際医療福祉大学大学院教授の石井美恵子氏です。石井さんは、「災害医療のスペシャリスト」として、東日本大震災で災害支援の現地コーディネーターとして派遣されるなど、様々な経験をお持ちの方です。

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「私は保守的な環境で育ったため、子供の頃から女性は自立しないといけないという思いを持っていました。社会人になって看護師になりましたが、そこでも看護師と医師のヒエラルキーを感じ、悩んだ時期もありました。そんな時、アメリカで災害医療の長期研修に行く話が舞い込んできて、チャンスと感じ、思い切って参加をしました。帰国後イランで地震が発生。手を挙げて現地に向かいました。
イランの他に中国など、その後何か国か海外の災害医療支援に行く機会がありましたが、様々な経験を通じて私自身、上手くいったなと思っているのは経験の再構成、つまり『ストレッチ』『リフレクション』を行って次のミッションにつなげていくことが出来た事です。そうすることで、色んな課題が見えてくるのです。
東日本大震災が起きたときは、教員として日本看護協会に所属していましたが、根回しの結果対策本部の会議に参加でき、そこで周囲の信頼を勝ち取って現地コーディネーターというポジションを得る事が出来ました。豊富な人的資源を、必要な所に優先して配置したい、そんな強い思いがあったためです。
一番大変だった石巻に赴任し、福祉避難所を開設して多職種連携のチームを作りました。
そこでは私は陰に徹し、リーダーを立てながらどうやったら上手くいくかを常に考えて行動しました。
災害対応はいつもゼロからスタートします。後世に遺産を残すための教育とシステムの構築が必要です。そして日本はいつまでたっても避難所=体育館ではなく、むしろ避難所はいらなくて、避難生活の場を作りたいと思っています。そして私の目標は、関連死(これは防ぐことが出来ます)、これをゼロになくす社会を作っていきたいと思っています。」

~地域(山口県萩市)の課題解決とプロデューサーシップ~
次の登壇者は株式会社コスモピア代表の田子みどり氏です。田子さんは、男女雇用機会均等法が制定される以前、女子大学生の時に起業され、女性が活躍できる環境を切り拓いてこられました。

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「私は山口県萩市で生まれ育ちましたが、地方都市の宿命として、他の若者と同様に、私も高校卒業後は萩を出て、東京の大学に進学しました。当時はまだ、男女雇用機会均等法の影も形もない時代で、大卒女子の就職は狭き門しか開かれていませんでした。そこで、会社のコネが出来るのではという下心のような思いもあり、ある企画事務所に入門しました。そこに集まっていた女子学生たちと仕事の実践の場として作ったグループが、現株式会社コスモピアの前身です。
会社経営の傍ら結婚、出産、離婚、再婚など人生の荒波をくぐり、しばらく実家に帰省する機会はあまりありませんでした。しかし、高校卒業30年後の同窓会の幹事役がきっかけで、故郷との関わりが再開しました。故郷が廃れているという同級生の話を聞き、何とかしたいという思いが湧いたのです。そんな時、山口県出身のベンチャー企業の社長が集まる会の会長をしている方とお話しする機会がありました。その会は、NPO法人ふるさと山口県経営者フォーラムへと生まれ変わり、私は現在常務理事事務局長を務めています。
私は山口県を中心とした様々な地域活動に関わってきましたが、専門家でもない私が様々な立場を引き受けるのは、自分の能力を超えているのではと悩んだりすることもしばしばです。しかし、最近は、ひとつひとつバラバラに見える活動や立場が、真珠をつないでネックレスを作るように、ゆるやかに繋がりあって意味を成してきているように感じる事があります。
それを繋いでいるのは、35年間会社を経営し、公私において様々な失敗や苦労をしながら集積した経験知とネットワークによるものです。設樂剛事務所の設樂剛先生は、未来社会の中核的存在となりえるのは強いリーダーではなく『インターミディエイター』であると提唱しています。中間にいる人、異なる世界を繋げていくもの、人、という意味です。これから私が目指すべきは、インターミディエイターとして、成果を出していく事だと考えています。」

~「ネガティブ・ケイパビリティ」を持つ「介助者」とは~
新聞記者を経て、現在は、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボで活動を行っている宮島真希子氏は、価値ある地域資源について常にリサーチし、新たなつながりの創出に取り組んでおられます。

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「私は長い間、神奈川新聞社に勤めておりました。その時感じていた事は、新聞社といったメディアは、イベントなど華々しい場しか取り上げず、地域の小さな活動の目やプロセスについては殆ど興味を示さない、または知らないという事でした。そんな折、記事に対する読者からのコメントを受け付け、双方向性のやり取りが出来る、当時画期的な試みでもあったブログ『カナロコ』の編集を担当することになり、地域との繋がりを初めて持つことが出来ました。ブログがきっかけとなって、肩書のない人と知り合い、もっとプロセスそのものに関わりたいという思いが強くなって、『カナロコ』の取材に来てくれたNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボに興味を持ちました。私は新聞社を辞めて、ローカルなインターネットメディアへの市民参加を促進する活動をしているNPO法人で活動をすることにしました。
私は、プロデューサーとは、新しい事を生み出すときの介助役、産婆のような役割であると考えています。私自身は生み出すわけではありませんが、対話の場を作り、地域の人の背中を押し、自己発見をしてもらう役割を担っています。
また、『ネガティブケイパビリティ』という考え方があります。事実や理由をせっかちに求めずに、不確実さや不思議さ、答えの出ない事態に耐えうる力という意味で、これがプロデューサーには求められると思います。なぜならイノベーションは長丁場で取り組む必要があり、ポジティブなだけではしんどいからです。様々な状況に耐えながら、虎視眈々とチャンスを狙う力が、これからの時代には求められると思うのです。」

次は、パネルディスカッションの時間です。第1部の基調講演を行って頂いた原山さんと山田さんにもここで加わって頂きました。
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登壇者と会場の参加者の方との間で、いくつか質問と回答が飛び交いましたが、最後に、ある参加者の方から『リーダーシップ』についての質問がありました。

「皆さんの話を伺いながら、皆さんの持っている共通点は何だろうかと考えていました。それで気づいたのはそれぞれが仰るリーダーシップの取り方が面白く、いわゆるビジネス本に書かれているようなやり方とは違う方法だなと。これからの変化のスピードが速い時代では、所謂オトコ的なリーダーシップは不要となり、皆さんのやり方が主流になるのではないかと感じていますが、それについてはどのように考えていますか。」

この問いに対し、登壇者の方各々に、リーダーシップ論を語っていただきました。

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山田さん「昔は登るべき山が決まっていたけど、今はどの山に登るのか、それとも登らないのか、というところから決めないといけない時代です。一方で大災害等ひっ迫した緊急時には、違うリーダーシップが求められます。時代や場面に応じてリーダーシップは変わっていかないといけないと感じています。」

石井さん「私は、他者にとって正しい事をするのがリーダーだと思います。あと、俺がこれをやったんだよねというスタンスは駄目。問題解決が実現できれば良いのであり、そのために自分はどういう役割を演じたらよいか、変幻自在に自分を演じる、セルフコントロールする力も必要と思います。」

宮島さん「事が難しい時にこそ、平和に、クリエイティブにいかないといけません。感情的な対立が起きると、本質的な問題から外れてしまい、必要な議論が出来なくなるからです。」

田子さん「強いリーダーって、重いし楽しくない。会社経営をしていると、この仕事は来年もあるのだろうかとか、本当に先が見えないことが多いので、私は、皆、こっちにいこうよ、というスタンスを取っています。その方が日々楽しく過ごせると思います。」

阿部さん「ゆでたまごのメンバーは皆私よりも年上で、知識も経験も豊富です。自分には出来ない事も多いから、皆に任せます。任せるようにしています。あとは、とにかく思いを伝えるのがリーダーです。思いを伝えて形にしているのがメンバーです。」

清水さん「本業を持ちボランティアで活動しているスタッフ達を、どのように巻き込んでいくか、という力が求められます。素直に一緒にやろうという、一歩下がれるリーダーが今の活動に必要だと思っています。」

原山さん「これまでのリーダーシップ論は、過去のビジネスケース等を集めてまとめられたものだけど、今この変革スピードの速い時代に、この概念はあてはまらない場合が多いです。そしてインセンティブよりモチベーション。やりたいという気持ちを引き出す力、そして謙虚であることが重要です。」

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この質疑応答を受け、シンポジウムの企画立案を行った、プロデュース研究分科会実行委員長の中原新太郎氏から最後に一言挨拶がありました。

「会場の皆さんが既にお気づきになられている通り、今回のシンポジウムは、様々なバックグラウンドを持ち、様々な分野で活躍されている方に集まっていただいています。多様な人が集まらないとイノベーションは起きません。それを伝えるべく、このような人選をさせていただきました。」

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登壇者の方一人ひとり、ご自身の経験も重ねながら、本当に多種多様なリーダー像を語ってくださいました。

【第3部】
第3部は、特別対談です。「2020東京オリンピック・パラリンピックに向けたプロデューサー」について、1998年の長野冬季五輪IOCリエゾンを務められた麻生菜穂美氏、NPO法人STAND代表理事の伊藤数子氏より、お話を伺いました。

麻生さんからまず、2020年オリンピックが東京で開催されるに至った経緯を、詳しくお話していただきました。
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「2020年の東京五輪は4回目の招致を経てようやく決まりましたが、他の候補イスタンブール、マドリードを破り、なぜ東京に決まったのだと思いますか?
トルコは民族紛争、スペインの経済・政治不安という懸念要素がありました。日本も2011年に東日本大震災がありましたが、その時、きちんと並んで給水車を待ち、食べ物を皆で分け合う日本人の姿の映像が、全世界に放送されました。日本人の礼儀正しさ、優しさが全世界に伝えられたのです。日本での五輪開催は、今度で4回目です。中国ですら2008年北京五輪の1回しか経験していません。こんな小さな島国が、4回も五輪が開催されるのはすごいことなのです。
そして、実は、2020年五輪の開催地が決まるIOC総会では、同時に次期会長も選出されることになっていました。選出されたのはドイツ出身のバッハ会長です。そのため、2020年五輪の開催地は、ヨーロッパ以外の国が選ばれることになりました。これがIOCのバランス感覚なのです。本日のテーマ、プロデューサーシップにも通じてきますが、すべての国と付き合わなくてはならないIOCは、このようなバランス感覚が非常に重要です。さらに、2024年の五輪はパリで行われる事になりましたが、実はこちらは2020年五輪より前から決まっていました。何故ならばちょうど100年前の1924年の五輪はパリで行われており、2024年を100周年として、同じパリでやりたかった。そのため2020年は、パリと同じヨーロッパ圏であるマドリードは候補から落ちてしまったのです。これもバランス感覚ですね。」

そして麻生さんご自身が今、感じている事も話してくださいました。

「私は現在宮城県に住んでいますが、そこで感じていることは文化の力は何物にもまさるということです。子供たちが郷土に誇りを持てないために、地方がどんどん過疎化していってしまうのです。ここには何もないつまらないところ、と大人から擦りこまれてしまっています。自分の国に誇りをもって、そのうえで英語のコミュニケーションが出来て、グローバルな時代に対応できる子供を育てていきたいと思っています。」

次に、伊藤さんより、何故障害を持った方のスポーツに興味を持ち、NPO法人を立ち上げるに至ったのか、お話しいただきました。

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「私が障害者の方のスポーツに興味を持ったのは、知り合いから誘われて、地元の電動サッカーの試合を観にいったのがきっかけです。想像以上に面白くて、応援していた地元のチームもどんどん試合に勝ち進んでいったのですが、その中で私が驚いたことは、全国大会に出場できない選手がいたということです。上の大会には、選手は皆、参加するのが普通だと思っていましたが、障害のある方は症状により、試合に参加できないことがあるのです。そこで試合に行けない選手にも見てもらいたいと思い、IT関係の知り合いの協力を得て、インターネットの生中継をしてもらうことにしました。
ところが当日会場で準備をしていると、ある男性の方が私達に近づいてきて『障害者を晒し者にしてどうするつもりや』と怒鳴られてしまったのです。その時私は動転してしまいました。もしかして自分はとんでもないことをしてしまったのではないかと。
しかし暫くして落ち着いて、『晒し者』という言葉について調べてみると、晒し者とは『人前に出て恥をかかされた人』であると。
絶対におかしいと思いました。何か社会が違っているところがあるのではないか。障害のある人のスポーツをもっとみんなに知ってもらったら、そこの選手が、社会が変わるのではないか。それで、2005年にNPO法人を立ち上げたのです。
主な活動内容は、ウェブサイトで情報発信して、障害のある人がやるスポーツを、障害のある人とない人で一緒に体験する体験会をやったり、2020年パラリンピックのボランティアをやりたい人達から要望があってボランティアアカデミーを立ち上げたりしています。」

また、伊藤さんは2020年パラリンピックに向けての思いも話してくださいました。

「あまり知られていませんが、1964年は東京パラリンピックも開催されました。その時、障害者の自立が課題に残されました。53人の日本人選手団のほとんどが日常的にスポーツをやっていないどころか、施設か病院で暮らしていて、職業を持っている人は3人のみ。病院で短い命が終わるのを待っていたのです。
2020年パラリンピックでは何か遺産を残したい。それは共生社会です。ボランティアアカデミーで勉強している人たちが、この2年の間に色んな知見をため込んでいきます。自治体の持っている推進本部は、2020年度になくなりますが、知見をため込んだ沢山の人たちの力を使い、2020年以降も継続的に社会を動かしていける、そんな仕組みを作っていきたいと思います」

次に対談形式で、お二人に、苦労したことや失敗談、それを踏まえて感じた事などをお話ししていただきました。

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麻生さん:何かを動かすことはとても大変なこと。でも、本気になる人が3人いたら、どんなイベントでも出来ると私は思っています。私は長野五輪の時には、開催する地域とIOCを繋ぐ仕事に携わりましたが、たまたま運よく、事務総長等現場のトップの直轄に配属されました。関わった仕事は、競技運営、文化式典、チケット、マーケティング、報道、広報、システム、等々本当に盛りだくさんで、もちろん失敗も数えきれない程ありました。でも、五輪に関われる人間は世界中でもほんの一握りです。本気でやりたいという熱い思いを持つ人が3人いるかどうかです。そして、こういう場では違う考え、違う環境で育ってきた人が同じことをやる必要があります。調整力が大事です。木だけでなく森も両方見れる人、全体を把握している人が必要です。

伊藤さん:NPOを始めて、最初は応援してくれる人がいる、上手くいくと思っていました。ネット中継をやってほしいという話もあったのですが、いざ企画書と見積書を持って説明に行くと先方に、『お金払わないといけないの?』と驚かれてしまいました。NPOは無料でやってくれる人達と周りに思われていたようです。NPO立ち上げて最初の2年間は本当に大変でした。最初私が思っていたことと実際が違っていたこと、ギャップが大きかったです。」

麻生さん:今日は色んな話を聞かせていただきましたが、全ては同じことで、人を繋いでいって未来を共有していくこと。同じ未来を見て、皆がそれぞれの分野で少しずつ変えていく事が大事だと思います。

最後に、会場の参加者の方からの要望もあり、パラリンピックを楽しむコツを伊藤さんに教えていただきました。

伊藤さん:パラリンピックの楽しみ方ですが、ポイントは3つあります。1つ目は、パラ競技は、ルールが工夫されています。例えばバスケットボールですが、5人のチームの一人一人に点数を持たせており、動きやすい人だと4~5ポイント、殆ど動けない人は2ポイントといったように点数が割り当てられ、全員で14点以内になるようにチームを作らなくてはなりません。そこに戦略があるのです。そのため、単に背が高い人が優位という一般のバスケットボールより面白いという人もいます。2つ目は、自分が応援できる選手を見つけてほしい。好きな選手が出来れば楽しんで観る事が出来ます。3つ目は、東京を中心に沢山の国内大会が開催されているので、それをまずは観に行ってみてください。パラリンピックまで待たずに、とリあえず何か、観に行ってみることをお勧めします。

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これで、長時間に渡る全てのプログラムが終了しました。
最後に、研究・イノベーション学会プロデュース研究分科会主査、およびNPO法人ZESDA理事長の桜庭大輔氏より、閉会の挨拶がありました。

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「今日は本当に良い話を伺うことが出来ました。プロデューサーは『懸け橋になる』ということ。でもそう言うのは簡単で、現場は死ぬほど難しいという話を今日は聞くことが出来ました。
自分以外の主役がいるときに、その人を立てる事が出来る力。リーダーシップに新しく求められるのは『補完性』です。そして、誰かの間に入るという事は、他者の目線を持ち、相手の事を考える事でもあります。分科会や、今日のシンポジウムを通して改めて感じた事です。本日は登壇者の皆さん、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。」

プログラム終了後、登壇者の方々や会場の皆さん、主催団体スタッフ交えて、懇親会を行いました。

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女性プロデューサーの皆さんのパワフルな人柄に圧倒されながら、皆さんの話にぐいぐい引き込まれ、あっという間のひと時でした。

会場の参加者一人一人が、これからの時代に必要なプロデュース力とは何か、そのために自分は何が出来るのか、何がしたいのか、真剣に考えるきっかけ作りが出来たのではないか、と感じています。

そして、今回の重要テーマの一つは「女性」でしたが、いずれは、「女性」「若者」「障害者」といった特定の属性で括って語らなくても良い社会が来れば良いなと感じました。