米国大使館 経済・科学技術担当参事官より「技術革新がもたらすシェアリング・エコノミー」 Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第17回セミナー開催のご報告

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 NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、(株)自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。

 2015年11月13日(金)朝7時30分より、(株)クリック・ネット様が運営する銀座のミーティング・スペース「まなび創生ラボ」にて開催した第17回PIPDセミナーでは、米国大使館において経済・科学技術担当参事官として活躍されているMs. Jessica Websterをゲストスピーカーとしてお招きし、「Sharing Economy driven by Technological Innovation (技術革新がもたらすシェアリング・エコノミー)」をテーマにプレゼンテーションをして頂いた上で、参加者の皆様とインタラクティブなディスカッションを行いました。

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 Websterさんは冒頭、「シェアリング・エコノミーとは何だろうか?」と問題提起され、バイク・シェアリング、カー・シェアリング、自宅等を宿泊施設として貸し出すサービス、自家用車を用いたタクシー・サービス等を具体例として挙げ、①十分に使われていない商品やサービスの共有や再利用による資源の最適な活用、②情報の共有によるステーク・ホルダー(企業、利用者、地域社会、社会全体)にとって商品価値の増大、という特徴を備えた新しい市場経済の仕組みであると定義しつつ、その形態は多様であると指摘されました。例えば、代表的なカー・シェアリングサービスは、企業が一般消費者に、路上の専用スペースに駐車してある共有車を提供するB to C(Business to Consumer)、個人間で様々な仕事を請負・発注するサービスはCtoC(Consumer to Consumer)、ワーク・スペースを共有するサービスはB to B(Business to Business)といった具合に、多様な形態で取引がされるシェアリング・エコノミーの実情が紹介されました。

 ここで参加者から、「シェアリング・エコノミーとバス、電車等従来型の公共交通機関との違いとは何か?」との質問が出されました。これに対してWebsterさんは、①サービスを提供する主体と利用する主体の役割が固定化されていないこと、②Intermediary(仲介者)としてのウェブ上のプラットフォームが存在すること、及び③スマホの活用により、従来型の公共サービスよりも、サービスの利用場所・時間が圧倒的に広く、融通が利くこと、を挙げられました。

 更に参加者から出された「サービスの信頼性はどのように確保されるのか」との質問に対しては、タクシーに代わり一般ドライバーが自家用車で配車を提供するサービスを例に、利用者とドライバーがそれぞれを評価するシステムが備わっていることで、信頼性を確保することができると指摘されました。参加者とWebsterさんと間の対話を通じて、シェアリング・エコノミーを通じた商品・サービスの流通が根付き、発展していく上で、テクノロジーがカギとなること、そして、シェアリング・エコノミーを通じて、提供者側と利用者側とで新たな信頼関係が構築されることが会場全体で共有されました。

 続いてWebsterさんは、日本のシェアリング・エコノミーの経済規模が2014年度で233億円、2015年度には290億円と、一年で35%の増加が見込まれており、既にモンゴルやベトナムと同程度の経済規模に達しているとの統計データを紹介されました。そして、アメリカで生まれたシェアリング・エコノミーを、今後日本で定着させていく上で必要な事柄として、①ユーザ及びプロバイダー双方の責任の自主規制を通じた明確化、②プライバシーの保護、③提供者側の適切な労働環境の確保、及び④政府による最適な規制の用意、を挙げられました。例えば、自宅をホテル代わりに観光客に有料で貸し付けるサービスについては、近隣住民への影響、火事等への備えについて、利用者と提供者双方が責任感をもって必要な行動をとることを心掛けるとともに、税制や規制等について、ホテルや民宿等、既存の同業他社との間で競争条件の平準化が必要となることが議論されました。Websterさんは、日本人の互いを信頼し合う国民性は、シェアリング・エコノミーを活発化させる上で重要であり、日本におけるシェアリング・エコノミーの今後の展開への強い期待を示してプレゼンテーションを締めくくりました。

 プレゼンテーション後の質疑応答では、シェアリング・エコノミーを活発化させる上で政府の規制が果たすべき役割、シェアリング・エコノミーの拡大と経済全体の規模の拡大との関連性等について、様々な意見が出されました。Websterさんの丁寧なプレゼンテーションと優しい人柄、そして、カジュアルな「まなび創生ラボ」の雰囲気があいまって、第17回のセミナーでは、終始活発な双方向の議論が交わされました。

 今後もZESDAはグローバル・ネットワークを構築していくため、「Platform for International Policy Dialogue(PIPD)」を共催して参ります。引き続き、ZESDAを宜しくお願い致します。