カリフォルニア州弁護士 Michael T. Kawachi氏より「説得力 〜あなたは、ビジネス・公共政策・私生活における困難な論争で、如何に人を説得できるか?」Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第15回セミナー開催のご報告

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 NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、(株)自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。

 2015年6月30日(水)朝7時30分より開催した第15回PIPDセミナーでは、カリフォルニア州弁護士、コロンビア大学ロースクール招聘教授、及び国際調停トレーニング・プログラム(International Mediation Training Program)専務理事として活躍しているMichael T. Kawachi氏をゲストスピーカーとしてお招きし、「説得力 〜あなたは、ビジネス・公共政策・私生活における困難な論争で、如何に人を説得できるか?」をテーマにご講演を頂いた上で、参加者の皆様とディスカッションを行いました。

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 Kawachi氏は冒頭、「日本以外で教育を受けた経験の有無」について参加者に問いかけ、参加者全員が自身の教育体験について、英語で答えていきました。続いて、10人の人物の写真がプレゼンテーションの画面に1人ずつ表示されていきました、ネルソン・マンデラ、イエス・キリスト、ガンジー、釈迦、安倍晋三、習近平、バラク・オバマ、ウラジーミル・プーチン、イ・ミョンバク・・・。そして、フロアに対して「あなたは誰を信用するか?それはなぜか?」との質問が投げかけられました。

 さらに、Kawachi氏は参加者に無地の紙を配り、「これから言う国・地域の地図を描いてほしい」と参加者に伝えます。「日本、中国、シリア、アメリカ、アフリカ、中東、北朝鮮、韓国・・・さぁ、皆さん、どのように描けたでしょうか?」多くの参加者は、日本から離れれば離れる程、また、自分にとってなじみの薄い国であればある程、地図の輪郭が曖昧になっていくことを体感していきます。

 こうした作業は、「人のモノの見方や捉え方は、職業、国籍、宗教、受けてきた教育等、様々な要因の影響を受けている。人は、それぞれの自身のバックグラウンドにより、異なるレンズで世界を見ている」ことを、短い時間で参加者が頭だけでなく体で理解できるようにするための、Kawachi氏によるユニークな工夫でした。そして、Kawachi氏は、「Persuasion is a matter of trust」(説得は信頼の問題である)、そして、説得しようという相手から信頼を獲得するには、まず相手との視点の違いを認識することが重要であると強調されました。

 Kawachi氏は、「説得」には3つの段階があると言います。即ち、1)自らの目標の実現に相手が喜んで従うこと、2) 相手を納得させること、そして、3) 自分の信念が相手の信念となること、であり、3番が最も深いレベルの説得であると述べられました。その上で、Ethos = Credibility(信用性)、Pathos=Relationship(関係性)、Logos=Communication(伝達)という言葉を用い、説得の場面において、どのくらいの時間をEthos、Pathos、Logosに割いているかについて、自問自答を通じて認識していくことが大切であると伝えます。

 例えば人は、親しい友人との間では、関係性の構築に多くの時間を割きますが、対立関係のある人との関係性を構築する場合、どのくらいの時間を使うでしょうか?Kawachi氏は、とても短い時間で法的問題について決着を付けることを求められる弁護士としての御自身の経験を振り返りながら、対立関係のある相手であればあるほど、関係性や信頼性を構築した上で、議論を進めることが大切であり、上手く相手を説得できない要因の多くは、伝えようとする内容というよりも、伝え方に大きく依存するため、まずは、態度・話し方・トーンなど、どのように伝えるかを準備する時間が必要であると述べられました。

 また、短い時間で信頼のあるコミュニケーションを行うには、「アクティブ・リスニング」が重要と強調します。これは、相手から発せられる言葉に注意を払い、理解しようと努め、ニーズや関心を読み取るテクニックです。人にはたくさんのニーズがありますが、Kawachi氏は5つの「コア・ニーズ」として、Appreciation(人としての評価)、Affiliation(人間集団への帰属-誰もが1人になりたくない-)、Autonomy(自主性)、Status(地位)、Role(役割)を挙げられました。アクティブ・リスニングにより信頼関係を築くには、「言葉」ではなく「人」を聴くこと、そして、上記5つの相手の「コア・ニーズ」を感情的に満たすことが効果的であると述べられました。

 プレゼンテーション後の質疑応答では、「日本人が欧米人に比べて大勢の人の前でのコミュニケーションや交渉が苦手であるといわれることが多いが、この理由はどこにあると考えるか?」、「アクティブ・リスニングの効果的な習得方法とは何か?」といった論点について、活発な議論が行われました。

 今後もZESDAはグローバル・ネットワークを構築していくため、「Platform for International Policy Dialogue(PIPD)」を共催して参ります。
引き続き、ZESDAを宜しくお願い致します。