NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、株式会社クリックネット まなび創生ラボの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。
6月10日(土)15時より開催された第36回PIPDセミナーは、東京大学の博士課程を専攻しながら笹川平和財団に勤められているKarthik Varada氏をお招きし、”Why Innovative Financing and Impact Investing is important to achieve the Sustainable Development Goals?”「『持続可能な開発目標』を達成するために、なぜ革新的な資金調達とインパクト投資が重要なのか?」についてお話し頂きました。
冒頭、Karthik氏は①持続可能な開発目標(SDGs)②ソーシャル・ファイナンス/インパクト投資の概要について、約20分間紹介されました。
①「持続可能な開発目標」
Karthik氏は、「持続可能な開発目標(以下、SDGs。)」とは、2015年に国連で採択された、2030年までに達成することを目指す全人類や地球のための17の目標と説明されました。その上で、発展途上国・先進国双方の目標であるSDBsの達成には、
1)公共部門、民間部門の垣根を超えた、分野横断的な協力関係をつくること、
2)達成に必要とされる資金(年間3兆9千億ドル)と、現時点での実際の年間投資額(1兆4千ドル)の間にある約2兆5千億ドルのギャップを埋めること、
の二点が重要な課題と指摘。この点、SDGs達成のために活用されている民間資金は、現状わずか1%程度であるため、効果的な民間資金の動員や現在世界に存在する資産のうち1%(2.5兆円)を毎年追加で発行することにより、財源問題を解決し、SDGsを達成するうえで不可欠と主張されました。
②ソーシャル・ファイナンス/インパクト投資
Karthik氏は、ソーシャル・ファイナンス/インパクト投資は、金銭的リターン得ることを目的とする従来の出資・融資と、寄付や慈善事業の中間に位置するものであると説明されました。すなわち、寄付や慈善事業とは異なり、社会的成果のみならず金銭的なリターンも求めること、また、従来の投資と異なり、金銭的なリスクテイクに見合うリターンを得ることに加え、社会環境の改善という社会的インパクトの要素を加味したものであると指摘されました。
ここで、15分間のグループ・ディスカッションの時間を持ち、私達がこれまで見聞きしたことのあるソーシャル・ファイナンスやインパクト投資の事例について、参加者同士で意見や知識を交換しました。
セミナー後半では、Karthik氏から日本とインドにおけるソーシャル・ファイナンスの具体例が紹介されました。日本の事例としては、公共部門に民間資金を動員しインパクト投資を促進する「SIIF(Japan Social Impact Investment Foundation)」や、がん検診受診率の向上のためのソーシャル・マーケティングという公益事業を提供している「キャンサー・スキャン」というベンチャー企業が、債券発行を通じて銀行等から動員した資金で事業を行い、一定の成果を達成した場合に、事業者に代わって政府が債券投資家にリターンを支払う「ソーシャル・インパクト・ボンド」の例が挙げられました。
インドにおけるソーシャル・ファイナンスの事例としては、日本業から出資を募り、現地の社会起業家に投資を行うARUNの活動が紹介されました。
ここで、再びグループ・ディスカッションを行い、参加者同士で、ソーシャル・ファイナンスによって改善しうる社会問題や、個人がソーシャル・ファイナンス促進に貢献する方法についてそれぞれの意見や想いを共有しました。
プレゼン終了後の質疑応答では、「インパクト投資は従来の投資と比べて、同じかそれ以上の利益を生み出すことはできるのか」等の質問が出ました。これについてKarthik氏は、マイクロファイナンスの事例等も紹介しながら、「これまでマーケットとみなされていなかった分野を事業化することで、インパクト投資が従来型の投資に見劣りしないリターンを得ることも可能である」と説明されました。
SDGs達成のために官民協働を発展途上国、先進国の双方において世界規模で展開することの重要性や、ソーシャル・ファイナンス/インパクト投資を自分事化し、私達が今から出来ることに関する熱い対話は最後まで続きました。セミナー終了後には、そんな熱気の籠った会場から近隣の洒落たバーに移動し、Karthik氏、PIPDスタッフ、参加者がセミナーの振り返りをしつつ、お互いの親睦を深める熱い議論を続けました。
最後に、本PIPDセミナーにおいても会場に協力頂いた株式会社クリックネットまなび創成ラボ様に、この場を借りて御礼申し上げます。