NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、株式会社クリックネット まなび創生ラボ、株式会社自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。
12月10日(土)の16時から17時30分までの時間帯で開催した第31回PIPDセミナーは、Gallup日本支社のゼネラルマネージャーを務められているAlberto氏をスピーカーとしてお招きし、「あなたの強みを発見せよ!」をテーマにお話しいただきました。Gallup社は、世論調査で有名な米系コンサルティングファームであり、第29回PIPDセミナーではCEOのJim Clifton氏をお招きし「世界の職場改革~女性の大躍進~」をテーマにお話しいただいていました。
また、今回はAlberto氏がご厚意で、ウォールストリートジャーナルのベストセラーである「Strength Finder2.0」を参加者に1冊ずつプレゼントしてくださいました!この本の巻末に添付されたコードを使うと、34の特性の中から、自分の強みとなるトップ5の強みを知ることができるテストを受けることができます。また、テスト終了後には特定された「5つの強み」にさら磨きをかけていくために日々心がけるべき習慣のリストや、「5つの強み」に磨きをかけることで達成が期待できる成果についてまとめたレポートを読むこともできます。
今回のセミナーでは、「強み」を知ることがなぜ重要なのか、また、そもそも「強み」とは何を指すのか、といったことを中心的なテーマとしてお話しいただきました。
◆「強み」を知ること◆
冒頭、Alberto氏は、強みを知ることがなぜ重要なのか、説明されました。自分自身はもちろん、自分のすぐ近くにいる人や一緒に働く人の「強み」を知ることで、お互いを補完し合いながら、全体として高いパフォーマンスを生み出すチームを作り上げることができるとのことです。例えば「Command:指揮・命令ができること」は強みですが、同じ強みを持った人間ばかりが集まったチームでは、パフォーマンスを発揮しにくいが、異なる強みを持った人間を組み合わせたチームを作ることで、それぞれの「強み」によってお互いの弱点を補完するチームを作ることができるということです。
さらに、「強み」を知ることの重要性について、以下のような例で紹介してくださいました。それは、本を読むスピードが速い人と普通の人に対して速読の方法を教え、それぞれのグループの本を読む速度がどれだけ向上するかを比較する実験です。速読の方法を習う前から速いペースで読む人は、改善幅も小さいだろうという予想を覆し、そうでないグループの人々と比べて、大幅に向上幅が大きいという結果が得られたそうです。この実験は、「強み」となる資質は、そうでない資質よりも大きく伸びる可能性があるということを示していると思われます。
◆「強み」とは何か◆
次にAlberto氏は「強み」とはそもそも何なのか、について説明してくださいました。多くの人は、「強みとは、優れた身体能力や容貌といった外に現れる特徴である」と考えがちですが、Alberto氏は、「内面に宿るものである」との考えを示されました。ここで言う「内面」とは、例えば、自分自身が意識することなくとる行動や、自分自身の日々の行動の原因となる動機などであるということです。
「Strength Finder2.0」に登場する34の「強み」は、まさにこういった内面的傾向に当たるものです。これらの「強み」は、Gallup社の創業者であり心理学者でもあったDon Clifton氏が、ビジネスにおけるパフォーマンスを左右する要因を調査することを通じて特定したとのことです。例えば、年齢や経験に関わらず、売上が高いグループとそうでないグループがあり、それを左右する要因は何か、という観点から調査したそうです。
なお、どのような強みであろうとも、そのこと自体に正解も間違いもないということです。Alberto氏自身は、「Strength Finder 2.0」のテスト結果に「戦略性」や「分析思考」といった戦略コンサルタントに必須と考えられる強みがなかったことに落ち込んだこともあるそうですが、現在では「学習欲」、「最上志向」、「達成欲」、「親密性」、「責任感」という相互に関係する一貫した自分の強みにとても満足しているそうです。
◆いかにして「強み」を知り、磨きをかけるか◆
では、私たちはいかにして自分自身の「強み」を知り、磨きをかけていくべきなのでしょうか。Alberto氏は、「強み」の元となるものは、「資質(Talent)」であると説明してくださいました。ここでいう「資質」とは、鋭い頭脳や優れた身体能力のことではなく、自然に生じる思考、感覚、行動を指すということです。例えば、気軽に人に話しかけることができること、順序だった形で物を考えることができること、忙しさを求めること、そして自ら行動を起こすことなども、「資質」になると紹介してくださいました。そして、「資質」は、それを認識した上で様々な場面に適用させることを通じて、「強み」へと変化させることができるとのことです。
Alberto氏によるプレゼンテーションの途中で、「自分自身の「強み」をどうやって見つるか」をテーマに参加者がペアになって英語で議論をし、結果を会場全体で共有するセッションを持ちました。その結果、「自分自身が自然に楽しめることは何かを考える」や、「自分自身の過去を振り返る」、「自分が達成したい目的から逆算する」といった考えが紹介されました。
こうした議論の中で、Alberto氏からは、「強み」に対する両親の影響についてもコメントがありました。両親の志向や行動は、幼い頃の生活や体験に大きく影響するため、その結果として、日ごろの思考や行動、そして「強み」に対しても影響し得るということです。Alberto氏自身の「強み」の一つには「学習意欲」がありますが、これはAlberto氏の母親が教師であったことも強く影響していると感じられているそうです。
「Strength Finder2.0」のテスト結果を参考にしつつ、自分が自然と楽しいと感じるもの、自分自身の過去の行動、両親からの影響なども探ってみることで、自分自身の「強み」をより深く知ることができると思われます。
◆「強み」の文化性について◆
Alberto氏は、プレゼンテーションの中で、各国ごとの「強み」のランキングを紹介してくださいました。興味深い結果としては、リーダーに備わっているときに大きな強みと考えられている「Command: 指揮・命令ができること」が、特にアジア諸国においては下位に位置していることが挙げられます。また、日本と中国において「協調性」が上位に来ていたのも特徴的でした。
また、「Strength Finder2.0」の34の強みはアメリカで開発されたということもあり、多くの日本人が美徳して捉える特性、例えば、謙虚さ、忍耐力、及び利他性といった項目がないという指摘がありました。この点について、現在Gallup社では、「Strength Finder2.0」を各国の文化的な背景も加味した新たなバージョンを作るために内部で議論しているということでした
日本人が「強み」と捉える特性として挙げられ議論を盛り上げたのは「オタク」です。日本の製造業は細かいものを作る技術や、さらに物を小さく作る技術に優れていますが、そういった「細部への注意力」は強みなのではないか、という意見が出されました。
この点について、Alberto氏からは、自身が若かりし頃に交番のお巡りさんがとても親切だった話を紹介しながら、細部に対する注意力という意味では、製造業のみならず、サービス業においても同じようなことが言えると述べてくださいました。細部への拘りは、「おもてなし」という言葉に通じる部分もあるかもしれません。
今回は、セミナー終了後に同じ会場でクリスマス会を開催しました。
Alberto氏からはとても素晴らしいワインの差し入れもいただき、約40名の参加者とAlberto氏で、交流を深める時間を持ちました。