フリー・ジャーナリスト David McNeill氏より「日本の報道の自由は大丈夫か?~外国人独立ジャーナリストの視点~」Platform for International Policy Dialogue (PIPD) 第19回セミナー開催のご報告

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 NPO法人ZESDAは、「官民恊働ネットワークCrossover」(中央省庁の若手職員を中心とする異業種間ネットワーク)との共催、(株)自由が丘パブリックリレーションズの協力により、在京の大使館、国際機関や外資系企業の職員、及び市民社会関係者をスピーカーに迎え、国内外の政治・経済・社会問題について英語での議論を通じて理解や問題意識を高める、「Platform for International Policy Dialogue (PIPD)」を開催しています。

 2015年12月14日(月)夜8時00分より開催した第19回PIPDセミナーでは、フリー・ジャーナリストとしてEconomist誌、Japan Times紙、及びThe Independent紙等を通じて活躍されているDavid McNeill氏をゲスト・スピーカーとしてお招きし、「Is Japanese Media Freedom in Jeopardy? – Perspective of Foreign Independent Journalist -(日本の報道の自由は大丈夫か?~外国人独立ジャーナリストの視点~)をテーマにプレゼンテーションをして頂いた上で、参加者の皆様とインタラクティブなディスカッションを行いました。また、今回のセミナーも、「まなび創生ラボ(株式会社クリックネット協賛)」をお借りして開催致しました。この場をお借りして、クリックネット社の丸山剛社長及び社員皆様のご厚意にお礼を申し上げます。

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 McNeill氏は冒頭の自己紹介において、フリーの外国人記者という立場は、実入りが悪く、困難で、多くの誹謗中傷に晒される等、割に合わないことはあるものの、自らの力量で世界中の人々に記事を発信できるという意味で、重い責任を伴う素晴らしい仕事であり、自分はこの仕事を愛している、と強調されました。また、外国人記者が直面する困難として、言語の壁に加え、記者がドラフトした記事を外国の本社で編集する編集責任者が、日本のコンテキストへの理解不足ゆえに、分かりやすいが表面的な内容に修正するよう指示を出しがちであることを挙げられました。また、ネットに掲載される記事には多くの読者を獲得するために日本に対する偏見を助長するようなねつ造記事が存在することも指摘されました。その例として、「日本の中学高校で不衛生な「眼球舐め」がはやっている」、「日本の中年女性が子羊をトイ・プードルであると騙されて買わされる被害が出ている」といった記事が、配信されたことを紹介されました。

 そのうえでMcNeill氏は、メディアの使命は「権力を監視する番犬(watchdog)であること」であるとし、最近の日本の多くのマス・メディアはこの使命から遠ざかりつつあると警鐘を鳴らされました。そして、関連するデータとして、世界180か国を対象に国際NGO「国境なき記者団(Reporters without boarders)」が毎年公表している「報道の自由度ランキング(World Press Freedom Index)を見ると、日本は民主党政権時の2010年に12位であったところ、2015年には61位まで大きく順位を落としていることを紹介されました。MacNeill氏は、その背景にある要因として、今年12月に行われるはずだった、国連の「表現の自由」をめぐる訪問調査受入を日本政府が直前でキャンセルしたこと、福島の原発事故をめぐる政府側の不明瞭な説明や、そうした政府の説明を、そのまま報道する日本の大手メディアの対応、特定機密保護法の成立、及び中国・韓国との間で論争となっている歴史問題等に係る報道について政府からかかるプレッシャーの増大や個々の記者にかけられる様々なプレッシャー等を挙げられました。

 また、戦後GHQによってつくられた記者クラブ制度について、政府側と選ばれた一部の大手報道機関双方にとって、相互依存的なシステムである一方で、一度その輪の中に入れば、想定外の「不規則質問」や空気を読まない「厳しい質問」をすることはタブー視されやすく、また、その輪の中に入れない者にとっては、取材対象へのアクセスや質問時間が限られる等、排他的な壁として機能しやすいこと等を指摘されました。

 McNeill氏は報道の自由を守り、高めていくうえでは、情報の受取手である一人一人が、良質な記事や核心を突く質問を要求し続けること、そして政府をはじめとする情報の発信者側は、異なる意見との衝突や厳しい質問と向き合うことを恐れずに、自らの考えや政策を正々堂々と発信し、質問と向き合うことが重要であることを指摘され、プレゼンテーションを終えられました。

 プレゼンテーション後の質疑応答では、満員となった会場から、個人が発信するブログ等のオンライン・メディアの果たす役割や課題、中国・韓国が展開する歴史問題に関するネガティブ・キャンペーンが日本の報道の自由に与える影響、一人の記者として、より良い記事を書く上で持つべき指針、そして市民一人一人が、少しでも「真実」に近い情報を入手し理解するために持つべき習慣等について、質問やコメントが出されました。

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 また、今回はセミナー終了後に同じ会場でクリスマス会を開催。約40名の参加者に今回のゲスト・スピーカーのMcNeill氏、及び第14回セミナー(日本の広報外交)のスピーカー、Dr. Nancy Snow、第17回セミナー(Sharing Economy)のスピーカーJessica Websterさん、第18回のセミナー(武器輸出)のスピーカーJerome Camireさん、そして年明けのセミナーでスピーカーを務められる予定の米国財務省のChristopher Winshipさんも交えて、参加者同士、及びゲスト・スピーカーの皆さんとの間での交流を深める時間を持ちました。

 今後もZESDAはグローバル・ネットワークを構築していくため、「Platform for International Policy Dialogue(PIPD)」を共催して参ります。引き続き、ZESDAを宜しくお願い致します。